Ring−序章−

暗い森の中、レイルは一人佇んでいた。
周囲には魔物の低いうなり声が響いている。

「くっ、まずい・・囲まれた・・」

悔しげな呟きをもらす。
背後で魔物が動き出した。そちらに気をとられた瞬間、
前方から一匹の魔物が襲い掛かってくる。

手にした杖を振り上げ、呪文を紡ぐ。

「風よ刃となりて敵を切り裂け、ルブレイド!!!」

風の刃が魔物を切り裂いて、
魔物は、力なくその場に崩れ落ちる。
周囲には、まだレイルの持つ杖の鈴の音が響いている。
周りにいた魔物の声も聞こえなくなった。

「やった・・のか?」

倒れた魔物にゆっくりと近づく。
息絶えていることを確認して、やっと息を吐く。
隙を見せたその瞬間、倒れた魔物を越えて、先ほどとは比べ物にならないほど
大きな魔物が現われた。
突撃してくる魔物を受け止めるのが精一杯で、そのまま
大地に引き倒されてしまう。

「くっ・・・・なるほど、お前がリーダーか。」

レイルの言葉に応えるように魔物が低くうなる。
噛み付かれそうなところを寸でのところ堪え、レイルは力強い瞳で
魔物をにらみつけた。

「聖なる光の矢よ。降り注げ、ティアレイン!!!!!」

呪文を紡いだ瞬間。
光の矢が魔物たちに降り注いだ。

「・・はぁ・・・やっと・・片付いたか・・っ・・なんだ?・・眩暈が・・」

絶叫のような魔物たちの叫びが鳴り止んだ後、

レイルは、もう目覚めたくないと思うくらい
深く、心地よい眠りについた。 

「・・おいっ・・起きろっ・・起きろってば!!」

眠りの底から呼び起こす何者かの声で、レイルは再び 
目を覚ました。 

「っ・・・誰だ?」
「やっと、起きたか・・大丈夫か?」

目の前に、闇のような黒い髪と血のような赤い瞳があった。 
大きな瞳の幼い少年が、心配そうにレイルを見つめている。
返事をするため、起き上がろうとした瞬間、頭痛を覚え小さく呻いた。

「・・・っ・・・。」
「どこか怪我をしているのか?」 

レイルは小さく首を振った。 
怪我などしていない。だが、先ほどの魔物と退治する前にも
何匹もの魔物と戦ってきた。疲労が限界を超えてしまっているのは確かだった。

レイルは、再び立ち上がろうとする。 
しかし、すぐによろめき、片膝をついた。 

「ふふ・・何をやっているんだ?怪我ないなら、疲れているのか?」 

目の前の少年は、そう笑った。 

「疲れては、いるな。」 
「なら、回復してやろう。ほら。」 

少年が手をかざすと、清らかな光が体を包んだ。 
疲れが癒されていく。 
回復魔法だ。 
こんな幼い少年が、なぜ使えるのかと、驚いた。 

「お前・・・何者だ?」 

未だやや掠れる声で、そう訪ねる。 
警戒心をあらわにすると、反対に少年は、無邪気に笑った。 

「僕は、魔王だ。」 
「はぁ?」 

耳を疑った。 
魔王? 

魔王だと・・・こんな子どもが?

「あっ、疑っているな?なら、証明してやろう。」 

にやりと笑うと、少年は指をパチンっと鳴らす。 
すると、少年の背後に闇の中から2人の青年が現われた。 

一人は、穏やかに微笑み。 
もう一人は、冷ややかに微笑んでいる。 

「ルゥ様、何か御用でしょうか?」 
「こいつを僕の城に運んでくれ。僕の城を見せてやろうかと思ってな。」 

穏やかに微笑む茶髪の青年が、少し驚いたようにレイルを見つめた。 
そして、もう一人の透き通るような銀髪の青年は、無言で 
レイルに近づくと、片腕を引き寄せる。 

「っ・・・離せ!」 
「黙れ、大人しくしろ。」 

見た目どおり、冷たい口調で青年は言った。 
その様子を面白そうに少年は見つめている。 

「ガブ、そう手荒に扱うな。一応、客人だぞ。」 
「・・・分かりました。」 
「やめっ・・・何をするんだ!!」 

冷たい青年は、少年の言葉を聞くと、少々嫌そうにしながらもレイルを丁寧に扱った。 
それでも、暴れようとするレイルに怒ったのか 
連れて行くのではなく、運ぶことにしたようだ。 

軽々とレイルを抱き上げると、また闇の中へと消えた。 

そして、闇からでたそこには、それはとてつもなく大きな城がそびえ建っていた。 

「ここが、僕の城。魔城、ヴァンデール城だよ。」 

少年・・・いや、魔王はそう嬉しそうに紹介した。 
魔王、さらに続ける。 

「君にもし行くところがないのなら、僕の元においでよ。」 
「えっ?」 
「僕は、ルウベリンセウス。皆、僕をルゥと呼ぶよ。君は?」 

レイルは、無邪気なその笑みに素直に答えた。 

「レイル・・・レイル・フェイドゥスだ。」 

そう言った瞬間。レイルは、強い眠気に襲われた。 
そして、また眠りについた。 

今度は、浅い夢を見る眠りに

「ゆっくりお休み・・・レイル、これから大変だろうからね。」

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